朝、ウイユヴェールはアパルトマンを出て河沿いに歩き、パンドーム広場へ入る。建物の中に入り(衛兵に身分証を見せる)ほの暗い廊下を進む。
会議室の扉を開く。
「遅刻だ、ウイユ」と男が咎める。口髭を生やしたシルバーのスリーピースはウイユを見つめる。赤毛には派手なウェーブがかかっており、名をポワソンリーといった。「まあいい。報告してもらおう」
「ホテルで男に会って必要事項を訊き、始末しました」ウイユはよく通る(静かでもある)声で報告した。
「よろしい。あとはラガの身内がやってくれるはずだ。これは君に全権を委託している。保身のためではなく組織のために言うが、慎重に頼むぞ」
会議室は広いがそのため暗く、出席者の面々の顔へ影を落としている。ウイユは自分の席へ歩み寄り、静かに腰を下ろす。コーデュロイのパンツに黒いタートルネックのセーターを着、革のジャケットを羽織ったラフな出で立ちだった。昨夜の不眠のため起きる時間が遅くなって服を選ぶ時間がなかった。急いでつけたロングピアスが暗がりに光る。
